いびきは、どうして起こるのでしょうか。
いびきは「鼻でかく」と思われがちですが、そうではありません。実はのどの奥、口蓋垂(のどちんこ)の周辺とその奥の部分で起こる場合が多いのです。鼻炎などの鼻の疾患が原因で起こることもありますが、ほとんどはのどの軟口蓋(のどのすぐ上の軟らかい部分)が原因です。いびきの音が鼻でしているかのように聞こえるのは、鼻孔を通して音が聞こえてくるからで、鼻が直接の原因ではありません。
いびきは、呼吸と身体の構造に大きな関係があります。
呼吸というのは、鼻で空気を吸い込んで肺に送り、逆に肺から二酸化炭素を吐き出します。このとき、空気や二酸化炭素は、のどの奥の「気道」を通っていきます。この気道が、起きて活動しているときと同じように、寝ているときも空気が通りやすいように広がっていれば、いびきは起こりません。スヤスヤと静かな寝息を立てて眠っていることでしょう。 ところが、何かの理由で気道が狭くなったり、ふさがれてしまうことがあります。これが、いびきの原因になります。
気道が狭くなると、空気は通り道をふさがれて、呼吸の際には空気がのどの奥を押し開きながら進んでいきます。このときに、空気と気道の粘膜が摩擦を起こしますが、この摩擦によっても音が出ます。
たとえば、思い切り走った後などに、ゼーゼーという激しい息づかいをしますが、これは大量の空気、すなわち酸素を吸ったり吐いたりして、粘膜と摩擦を起こしているために出る音です。このとき、空気の摩擦やその勢いによって、気道の粘膜や組織が振動して音を出します。また、それらから分泌されるものも振動して音を発します。これがいびきです。気道がふさがれる場合、何か物がはさまっているのであればそれを取り除けばいのですが、寝ているときに舌が垂れ下がったり、気道の粘膜が垂れさがったようになったりと、いろいろな理由があります。
つまり、いびきとは、睡眠中に上気道やその粘膜、分泌物などが、呼吸に伴って発する振動音や摩擦音のこと、といえます。
【疲れやストレス】
仕事やレジャーで疲れて帰ってくると、あっという間に寝入ってしまいます。こんなときによくいびきをかくといわれています。身体が疲れていると、寝入ったときには身体中の筋肉が弛緩しています。身体の筋肉が弛緩していくと、舌や軟口蓋が下に垂れ下がるようになります。呼吸をしている筋肉も、気道の粘膜もたるんできます。つまり、気道がふさがれやすい状態になっているのです。
一方、呼吸中枢は疲れた身体を回復しようと、大量の酸素を送り込もうとします。運動をした後の状態と同じで、身体中の細胞に酸素を送り込もうと、深く大きな息をします。すると、のどの筋肉や粘膜がたるんでふさがれやすい状態になっている気道を、大量の空気が通るために、いびきが起こります。
【肥 満】
肥満は身体に脂肪がついていくことですが、脂肪がつくところはお腹や背中ばかりではありません。日常の活動で燃焼しきれなくなった脂肪は、まず筋肉につき、ひどくなると内臓にまでついてしまいます。
のどの壁の部分にあたる気道も筋肉ですから、気道の粘膜の内部にも脂肪がたまっていきます。その脂肪が粘膜を押し出すような形になって気道をふさいでいきますと、空気の通り道が狭くなり、いびきの原因になります。現代病の一つでもある肥満は、一朝一夕に解消できるというものではありません。肥満が社会問題にもなる時代ですから、これはだれもが抱える危険といえるでしょう。
【鼻に病気を持っている場合】
鼻の病気を持っている人には、日常的にいびきをかいている人がたくさんいます。
アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)などがあると、鼻がつまりやすいために空気の通り道が狭くなり、鼻腔の空気抵抗が大きくなって、軟口蓋の裏の部分が陰圧の状態になりやすく、軟口蓋や口蓋垂が振動しやすくなり、いびきが起こります。また、完全に鼻がつまると、口で呼吸することになり、口が開いて舌が落ち込みやすくなります。このために、咽頭が狭くなって空気の通り道がせばまり、いびきの原因となることがあります。鼻中隔湾曲症なども、いびきの原因の一つです。
【のどに病気のある場合】
アデノイドが大きい場合、口蓋垂が長いケースやもともと気道が狭い人なども、いびきをかきやすくなります。また、口蓋扁桃肥大、あごが小さい人などもいびきの大きな原因になります。
アデノイドは鼻腔の後方にあって、4〜5歳前後に最も大きくなるといわれています。鼻が出るわけでもないのに口をポカンと開けている子どもは、アデノイドが大きいことがよくあります。アデノイドが大きくなると、鼻がつまってくるために、軟口蓋や口蓋垂が振動しやすくなって、いびきの原因になることがあります。また、アデノイドが大きい子どもは口蓋扁桃も肥大していることが多く、これらが一緒になって上気道がふさがれ、睡眠時に数秒以上にわたって呼吸が止まる無呼吸発作(P 参照)を起こすこともあります。口蓋扁桃が肥大していると、呼吸をするときに扁桃の裏が陰圧状態になり、奥の方へ引っ張られるような感じになるため、扁桃と咽頭後壁(口を開けると見える、のどの突き当たりの壁)の間が狭くなって振動が起こり、いびきが起こることがあります。また、口蓋垂(のどちんこ)が長いと、息を吐くときに震動源となり、いびきの原因になります。
【飲 酒】
お酒を飲んだ後も同じです。アルコールを飲んで寝入ったときも、鼻腔の粘膜にうっ血が起こったり、疲れているときと同じく、舌やのどの筋肉が弛緩して、仰向けに寝ると舌が落ち込んで気道をふさぎ、いびきが起こります。
【老 化】
私たちの身体は老化してくると、皮膚や筋肉などが弛緩してきます。年齢を重ねると、老化して皮膚がたるんでシワになるように、気道の粘膜や組織もたるんできて、いびきの原因になります。 |